らんちゅうの仔引きに挑戦
らんちゅうの飼育スタイル、楽しみ方には色々ありますが、らんちゅうを飼うからには是非仔引きをしてみたいものです。春の産卵から秋まで育て上げて、自分の気に入ったらんちゅうが出来た時の喜びは格別です。また多少欠点があっても自分で育て上げた魚には完成してから買った魚には無い愛着があるものです。以下簡単に私の行っている仔引きの手順を紹介します。まだ仔引きをしていない方で飼育スペース、時間の許す方は是非挑戦してみてください。
《親らんちゅうの準備》
冬の間水底でじっとしていたらんちゅう達も徐々に水温が上がって10℃近くになるとだいぶ泳ぐようになってきます。この頃になったら舟の掃除を兼ねて軽く水換えをしてらんちゅうを冬眠から起こします。このときの水換えは水を換えるというよりも底にたまったごみを掃除して減った分だけ新水を追加する感じで出来るだけらんちゅうを刺激しないようにします。そして数日後位から少しずつえさを与え始めますが、産卵に使う親にはあまりえさを与えすぎないようにしています。脂肪が付き過ぎるとメスは産卵しなくなったり、オスはメスを追わなくなったり、生んでも受精率が悪かったりします。そしてオスとメスを分けて飼育します。早めに産卵させたい場合にはヒーターを使って温度を上げることもありますが、あまり極端に早く産卵はさせないようにしています。
《オス、メスの見分け方》
下の写真のようにオスの総排泄孔は小さめで細長い楕円形で発情してくると胸ビレに追星と呼ばれるにきびのような白いぼつぼつが出ます。さらに成熟すると腹部を軽く押しただけで精液が出るようになります。それに対してメスの総排泄孔はオスよりやや大きめで丸に近い楕円形です。胸ビレに追星は無く、抱卵して成熟してくると、腹部がふわふわで柔らかくなります。全体的な印象派オスはスマート、メスはふっくらした感じです。
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雄の胸ビレ(追星がある) |
雄の総排泄孔
(小さめで細長い楕円) |
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雌の胸ビレ(追星がない) |
雌の総排泄孔
(大きめで丸に近い楕円) |
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キンラン |
《産卵用舟の用意》
らんちゅうを起こしてオスメスを分けて飼育し、しばらくするとオスは追星がはっきりしてお腹を軽く押すと精液が出るようになります。メスもお腹が膨らみ触ると柔らかくなってきます。起こしてから成熟するまでの期間は個体差や水温、水質等条件によって変わってくるようですが、水換えや、エサのあげすぎは体調を崩して逆効果になることもあるのであせらずに魚任せで待つようにしています。十分成熟してきたら産卵用の舟を用意します。まず舟を綺麗に洗って産卵巣をセットします。私のところでは産卵巣にキンランを使っています。早めに産卵させるために親の舟を加温している場合はもちろんですが、自然産卵の場合も急な冷え込みを防ぐためにヒーターを入れ20℃位にセットします。
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産卵の様子 |
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人工授精 |
《らんちゅうを入れて産卵させる》
産卵巣をセットしたらメス1匹とオス2~3匹を放します。オスメス共に十分成熟していれば翌日か翌々日位に産卵します。中にはあまりメスを追わないオスやオスは追っているのに産卵しない雌もいるので、何日もたって産卵しないようならいったんオス、メスを分けて十分成熟するのを待つか、違う魚でやり直します。また産卵は始めたもののなかなか生み終わりそうも無いときは、親が疲労してしまったり卵を食べたりするので人工授精することもあります。人工授精は右手と左手にオスメスを一匹ずつ持ち、互いの総排泄孔を近づけそっとお腹を押して卵と精液を搾り出して受精させますが、なれないと卵が出たときにうまく精液が出なかったり、上手に両方が出ても卵が固まってしまい1粒ずつ産卵巣に付かなかったりとなかなかうまく出来ません。上手に出来ればかなり孵化率はいいのですが塊になってしまうとその一塊はほとんどかびてしまいます。無事産卵が終わったら親を舟から取り出して十分休ませます。卵はそのままの状態で孵化を待ちます。特別に産卵用に舟を用意しないで親をオスメス一緒に飼っていればそのままでも産卵しますが、やはり上記のように親に使いたい魚を選んで計画的に産卵させたほうが良いと思います。
《孵化&餌付け》
卵は20℃で約5日で孵化し、はじめは産卵巣や舟の縁にくっ付く様にしていますが2日から3日位で泳ぎ始めるので餌付けを始めます。初期試料にはブラインシュリンプを与えています。稚魚が泳ぎ始めたらすぐにブラインシュリンプを与えられるようにタイミングを合わせて孵化させておきます。ブラインシュリンプは淡水中ではあまり長い間生きていないので一度にあまりたくさん入れすぎると死骸で水質を悪化するので少しずつ様子を見ながら入れます。
《育成&選別》
稚魚はブラインシュリンプを食べ始めるとどんどん大きくなります。飼育密度を薄くすることで早く大きくなる上、水も長持ちするのでどんどん選別し数を減らしたり、舟を分けたりします。産卵、孵化がうまく行けば一腹でかなりの数の稚魚が孵化しますので選別して数を減らさないと育たないばかりか水質の急変で全滅させてしまうこともあります。選別は初めは体が曲がっている奇形を除くことから始め、成長に合わせて尾の開き具合や背の形などを見て気に入った物を残してゆきます。思い切って数を減らすことが大切だと思いながらもなかなか数が減らせないものです。
エサも初めはブラインシュリンプのみで飼育しますが10日目頃から徐々に粉末の人工飼料や冷凍みじんこを与え始め、稚魚の大きさに合わせて人工飼料の粒の大きさや種類を変えてゆきます。そしてタバコ位の太さになると冷凍赤虫が食べられるようになりますので、赤虫をメインで人工飼料と併用して育てます。